大阪高等裁判所 昭和25年(ツ)3号 判決
上告人 吉川貞一
被上告人 田中武志
一、主 文
本件上告はこれを棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
二、理 由
本件上告理由は末尾に添えた上告理由書と題する書面<省略>に記載したとおりである。
上告理由第一点について、
原審は被上告人が本件家屋の階下仕事場の一部を昭和二二年夏頃から新報社名義で新聞を発行していた平山実に使用させており、その使用の状態は階下仕事場の一端に机二個をおき、ここに新報社の事務員一、二名が通勤して事務をとつているだけで、その使用部分を区画する仕切があるわけでなく、賃料も定めず使用部分も特定せず、單に事実上好意的にそこで事務をとらせているに過ぎないことを確定した上、右は被上告人が本件家屋に対する占有支配を新報社に移轉せず單にその一部を同社に使用させているだけで、同社は本件家屋の一部を独立して占有するものでもないから民法第六一二條にいわゆる轉貸借に該当しないものと認定したものであつて、原判決挙示の証拠によるとこのような判断もできないことはない。所論は結局原審の專権に属する事実の認定を非難し、或は独自の見解に基いて民法第六一二條にいわゆる轉貸借に関する原審の判断を論難するものであつて採用の限りでない。
第二点について、
上告人は原判決には本件家屋の一部明渡の点について審理不盡の違法があると主張するけれども、上告人は本訴において本件家屋全部の明渡を求めており原審檢証調書によると「上告人において被上告人と上告人とは職業の種類が全然別であつて本件家屋は廣いことは廣いが使用可能の部屋が少ないから被上告人と上告人との同居は可能でない」と主張したことが明白であつて、上告人は本件家屋全部の明渡を求め一部の明渡を求める意思のなかつたことが認められるから、原審が本件家屋の一部に対する解約の当否について判断したのは蛇足であつて、この点に関し所論の如き事実を考慮しなかつたことを以て審理不盡の違法があるとする論旨は採用できないばかりでなく、原審では原判決挙示の各証拠によつて判示の如き事実を認定した上、該認定事実に基いて上告人には本件家屋の全部又は一部についても何等明渡を求め得べき正当の事由がないと判断したのであつて右各証拠によればこのような判断もできないことはない。所論は結局原審が本件賃貸借解約の申入について正当事由があるか否かを判断するにあたりその根拠とした原審の專権に属する事実認定を非難し或は上告人独自の見解に基いて正当事由の存否に関する原審の判断を論難するものであつて採用に値しない。
よつて民訴第四〇一條、第九五條、第八九條に從い主文のとおり判決したのである。
(裁判官 大嶋京一郎 林平八郎 大田外一)